
受賞歴
言語障がいや吃音など、発話機能の発達の違いによって「自分の意思を言葉で伝えること」に困難を抱えている方々がいます。
私たちは今回、そうした方々がお店や病院などの社会生活において、よりスムーズに、そして心理的ストレスなくコミュニケーションをとるための補助代替コミュニケーション(AAC)アプリを開発しました。 今回私たちが開発したのは、スマートフォンの位置情報(GPS)を活用したWebアプリケーションです。
最大の強みは「ユーザーの現在地に合わせて、最適な単語カードを自動で提案する」という点です。 例えば、現在地が「コンビニ」であれば、「袋」「温める」「おにぎり」といったその場所で最も使われる語彙だけが画面に展開されます。「病院」であれば「痛い」「ここが」といった言葉が優先されます。
ユーザーは表示されたカードをタップするだけで、ブラウザ標準の音声合成機能(Web Speech API)が即座に言葉を読み上げます。
さらに、AIを活用して「⭕️温めてください」「温めないでください」といった肯定・否定の候補を同時に出力することで、単語を組み立てる認知負荷を極限まで下げました。
このプロダクトが生まれた背景には、開発メンバーのひとりの「家族」の存在があります。
その家族は発話に困難を抱えており、身内との間ではオリジナルのボディランゲージを使って、とても豊かにコミュニケーションをとっています。その表現は個性的で自由であり、決して否定されるべきものではありません。
しかし、一歩「社会」に出ると状況は変わります。コンビニのレジやカフェの注文でそのボディランゲージは通用せず、意思を伝えることができません。
既存のコミュニケーション支援アプリやフラッシュカードも試しましたが、それらは何千ものカードから必要な言葉を「探す」必要がありました。レジ前で言葉を探す数秒間は、後ろに長蛇の列を作るプレッシャーとなり、時には店員さんから冷たい対応をされることもあります。この「即答性がないことによる焦り」が、当事者にとって大きな心理的ストレスとなり、「外食をする」「買い物に行く」という社会参加のハードルそのものを高くしていました。
マイノリティが、健常者を基準に作られた社会に一方的に合わせるのではなく、双方が心地よくやり取りできる「交点」を作ることはできないか。
その答えとしてたどり着いたのが、探す時間をゼロにする「場所連動」というアイデアと、相手に待つ姿勢を促す「音声アプリで会話します、少しお待ちください」というSOSボタンの設置でした。
現在のMVP(実用最小限の製品)から、今後は以下の機能拡張と社会実装を目指しています。
店舗とのQRコード・NFC連携
屋内ではGPSの精度が落ちる課題を解決するため、協力店舗のレジ前にQRコードやNFCタグを設置。読み込むだけで瞬時にそのお店専用のボードが開く仕組みを作ります。これは店舗側にとってもレジの回転率向上というメリットに繋がります。
スマートウォッチ連携(バイタルデータの活用)
パニックになってアプリすら開けない状況を防ぐため、スマートウォッチの心拍数上昇などから「焦り」を検知し、自動で「助けてください」「少し待ってください」といった緊急ボードを展開する機能を構想しています。
アプリケーションとしての正式リリース
Webアプリ(PWA)やネイティブアプリとしてブラッシュアップを重ね、実際に当事者の方々に日常的に使っていただける形でのリリースを目指します。
世の中には本当に様々な個性を持つ人がいて、たった一つのアプリで全員を完全に平等にするような「魔法」はありません。けれど、技術の力で『外に出て会話したい』『社会と関わりたい』という挑戦のハードルを下げることは絶対にできます。
私たちはその可能性を信じ、誰もが社会との繋がりを諦めない未来に向けて、これからも開発を続けていきます。